UTI はすべて同じ細菌が原因で起こるのではなく、患者さんの症状も全員が同じではありません。今ある方法で容易に診断できる UTI でも、結果が出るまで時間がかかれば、それを待つ間、本当は適していない抗生物質が処方され、症状が良くならないこともあります。もし既存の診断検査で検出できない UTI だったら、誤って治療を拒否されたり、数種類の抗生物質を適当に処方されてしまうおそれがあります。このようなことは薬剤耐性(AMR)の問題を深刻化する要因ともなるのです。
ポイントオブケアでの抗菌薬感受性試験(AST)や、分子生物学的手法、もっと慎重な、先進研究に基づいた検査法は、すべての患者さんのニーズを満たすために大きなメリットがあります。診断法の開発には時間がかかる可能性がありますから、課題を解決するための投資が、早急に必要です。
その一方で、複雑な UTI もあること、また、自分が今 UTIなのかどうかは患者さん自身が一番よくわかっていることもあるのを忘れてはいけません。画一的なアプローチは患者さんを失望させ、抗菌薬を正しく使えないことにつながってしまいます。
薬剤耐性の問題
もし深刻な感染症が抗生物質で治療できなくなったら、がん化学療法から帝王切開まで、今日当たり前のように行なわれている医療の多くでリスクが高まります。薬剤耐性が直接の原因で、すでに世界で毎年100 万人以上が亡くなっています。
薬剤耐性 の増加は尿路感染症でも顕著です。WHOが 2022 年に行った調査では、UTI の最も一般的な原因菌である 大腸菌(E.coli) 分離株の 20% 以上が、よく使用されるUTI の抗生物質治療に耐性があると推測されています1。
医師が現在 UTI の診断に使っている方法は、かなり前に開発されたもので、薬剤耐性増加の一因ともなっています。感染を根絶するための標的抗生物質が処方されるまでに、時間がかかるためです。患者さんによっては感染の原因がまったく特定できず、やみくもな抗生物質治療を繰り返されることがあるほどです。
これは 薬剤耐性 の問題であるだけでなく、女性の健康の問題でもあります。
UTI が適切に治療されなければ、患者さんにとって日々の大きな負担となります。有効な抗生物質を特定できないために感染症が重くなり、広域スペクトル抗生物質で治療することになるかもしれません。この悪循環を断ち切り、UTIの標的治療ができるようにする診断は、抗菌薬の使用を適正にするだけでなく、女性の健康も改善します。
尿路感染症の現状
UTI にかかることは珍しくありません。プライマリ・ケアで抗生物質が処方される主要な原因でもあります2。2019 年には世界中で推定 患者数が4 億いて、女性が男性の 3 倍以上だと考えられます3。しかもUTI のために亡くなる人の数は 1990 年から 2019 年の間に 2.4 倍と増加、25 万人近くに達しており、深刻な問題です。
ほとんどの女性は UTI を少なくとも一生に一度は経験し、大半の女性が複数回かかります。治療せず放置すれば、健康な若い人でも重篤な腎感染や敗血症に進行して入院となる、まれには亡くなってしまうこともあります。
UTI は膀胱内で細菌が増殖して炎症を起こし、さまざまな症状を引き起こす疾病です。たとえば、常に尿意を感じる、頻尿、排尿時に灼熱感やチクチク感(刺痛感)がある、尿中に血液が混じる、腹部不快感などです。
「みなさんご存じのとおり、膀胱が一杯になったままの状態はとても気が散るし、ストレスになります。たとえば会議中や電車の中、劇場などでトイレに行けない状態で、24 時間こんな感覚があることを想像してみてください。これが多くの UTI 患者さんの現実なのです」
女性は尿道が短く、また肛門に近いため、腸からの細菌が入りやすく、解剖学的にUTIになりやすくなっています。最近の研究では、腸内菌叢(フローラ)が乱れたり、乳酸菌などの保護菌種が足りなかったりすると、膣も細菌の発生源になり得るというエビデンスがあります 4。膀胱と膣内の細菌叢の関連性は現在研究が進められていますが、わからないことが多いのが現状です。
男性も、多くはありませんがUTI になります。また、高齢者やカテーテルを使用している人も、UTI には注意が必要です。高齢者の症状は特に苦悩を伴いがちですし、錯乱やせん妄につながることもあります。UTI はフレイルを悪化させ、自立した生活を送れなくなってしまうきっかけにもなるのです。
感染症の約 4 分の 3 にかかわっているのが大腸菌ですが、その他のさまざまな菌種群も関与している可能性があり、それぞれ異なる抗菌薬感受性プロファイルを持っています。
UTI を引き起こす可能性のある菌種には、たとえば以下のようなものがあります:クレブシエラ・ニューモニエ(肺炎桿菌)、腐性ブドウ球菌、フェカリス菌、エンテロコッカス・フェカーリス、B群溶血性連鎖球菌、プロテウス・ミラビリス(グラム陰性桿菌の一種)、緑膿菌(シュードモナス・エルギノーザ)、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス)、カンジダ属、などなどです5。
UTI検査の現在、課題と限界
尿試験紙検査
UTI が疑われる症状があって医療施設を受診すると、よく行われるのは試験紙を用いた尿検査です。これで白血球(感染に対する免疫反応のマーカー)、亜硝酸塩(細菌の代謝のマーカー)、赤血球(膀胱の損傷のマーカー)を調べます。
尿試験紙検査は感度が低いことが、複数の研究で示されています6,7,8,9,10。その1つでは、症状があり、しかし試験紙の検査で陰性だった患者に3 日間、標準的な UTI 用の抗生物質を投与したところ、プラセボに比べて症状が大幅に低減されました11。試験紙検査の欠点として、UTI を引き起こす微生物のうち、エンテロコッカス(腸球菌)などが正確に検出できないことが知られています。これらの菌は代謝で亜硝酸塩を産生しないためです。

尿培養検査
他によく利用される検査として、中間尿培養検査(一般的に尿培養検査と呼ばれる)があります。少量の尿(通常1~10 マイクロリットル)を寒天培地に塗布し、24 時間培養します。
設定されたカットオフ値(しきい値)を超えて細菌が増殖していれば、陽性と分類されます。得られた分離株で抗生物質感受性の試験を行い、その後初めて適切な抗生物質を処方できます。検査全体は2~4 日以上かかり、輸送と報告でも時間を取られます。
尿培養の弱点はよく知られています。たとえば、陽性または陰性が、細菌コロニー数のカットオフ値に基づいて判定されること。これまでのカットオフ値は1 mL あたり100,000 細菌ですが、この制限がまだ多くの場合に適用されています。

尿培養と100,000/mL というカットオフ値の使用は、多くの研究で疑問視されています。たとえば次世代シーケンシングやPCR、強化培養法などの他の手法で症状のある人を検査すると、既知の尿路病原体をもっと高い割合で検出できます12,13,14,15,16。一部の医療ケア・システムでは、より多くの UTI を正しく検出するために、カットオフ値を低くしていますが、一般的には画一的な数値がいまだに使われています。
尿培養法のもう1つの問題は、UTI の主な病原体であり増殖の速い大腸菌に合わせて培養条件が調整されていることです。しかし、その他の細菌や真菌が UTI を起こしている場合もあります。その中には、培養条件によって増殖が遅いものや、まったく増殖しないものがあります。これは「栄養要求性の高い」細菌と呼ばれることもあり、体外では非常に特殊な条件下でしか増殖しません。
尿培養法ではまた、UTI症状を引き起こす細菌その他の感染因子が膀胱内に自由に浮遊しており、尿サンプルを取れば容易に採取できると仮定しています。ところが細菌が膀胱壁内に「埋まっている」つまりそこに細胞内コロニーを形成して抗生物質との接触から保護され、反復性UTI の大きな原因となる可能性があるというエビデンスがあるのです。これについては、さらなる研究が必要です17。
なぜ、UTI検査が不適切な治療や不十分な医療ケアにつながる可能性があるか
UTI 症状のある患者さんは通常、尿サンプルを求められ、多くは(上記のように感度が非常に高いとはいえない)試験紙で検査されます。
試験紙検査の結果が陽性のとき、病原体がわからないまま抗生物質が処方されるおそれがあります。地域のガイドラインに従うこともあれば、標準的な「定番」の中でも好みの抗生物質を医師が選ぶこともあります。つまり処方された抗生物質が、その症状を引き起こしている菌種には最適でない可能性があるのです。
たとえば広く使用されているUTI 抗生物質のピブメシリナムは大腸菌には良く効きますが、病原体がエンテロコッカス(腸球菌)群だと効果がありません。
試験紙検査の結果が陰性でも(本当にUTI であっても陰性と出ることも多いため)、臨床医は患者さんのうったえる症状を信じて、とりあえず抗生物質を処方することがよくあります。
その一方で、試験紙検査に欠陥があったために患者さんが治療を断られてしまうケースもあります。危険ですし、患者さんの生活の質の低下につながります。適切な治療を受けられるまでに何度も医療機関を受診することになり、その時にはすでに感染症が進行し、治療が難しくなっているかもしれません。
試験紙検査後の残りの尿サンプルは、多くの場合セントラル・ラボ(検査センター)に送られ、そこで培養試験が行われます(ただし、低感度の試験紙検査で陰性になると、送られないこともあります)。
カットオフ値を超える細菌が検出されると感受性試験が実施され、ここで初めて適切な抗生物質が特定、処方されます。
これは良い結果ですが、その時点まで患者さんは、適切ではないかもしれない抗生物質を約3 日間服用し、その間ずっと苦しみ、症状が悪化しているかもしれません。
適切な抗生物質の投与するのが遅れた場合、選択圧(抗菌薬で多くの菌が死に、その薬に耐性を得ていた少数の菌が増殖しやすくなること)がかかります。これが特にあてはまるのが、抗生物質が膀胱内だけでなく、大きく複雑な細菌叢をかかえた消化器系でも作用するときです。世界で何百万もの人々がUTI を発症していることを考えれば、薬剤耐性の危険が大きくなることがわかります。

尿培養試験の結果が陰性だった人は元の抗生物質を引き続き使用しますが、それが効くことも、効かないこともあります。抗生物質が効かなければ、再度受診することになります。検査が陰性だったのだからUTI ではありえないと言われ、それ以上の治療をしてもらえないことさえあるかもしれません。尿培養試験が確実でないのは知られていますから、そんなことになれば、症状のある患者さんは失望するでしょう。
尿培養で陰性だった人でも、別の抗生物質が効くかもしれないと、処方されることもありますが、これも手探りで行われます。この段階で再び尿培養試験のために別の尿サンプルが送られることがありますが、すでに抗生物質を服用しているため、カットオフ値を満たす可能性はさらに低くなります。
患者さんが何度も戻ってきて、さまざまな抗生物質を投与されることは珍しくありません。薬剤耐性の観点からは、多剤耐性菌の増殖につながる可能性があるため、非常に問題です。
個人レベルでは、UTI症状をかかえる人はとても辛い思いをしているはずです。日常生活に深刻な影響があり、「健康」とはほど遠い状態でしょう。

長びく UTIや、再発性 UTI、または腎感染まで進行した UTI の人には、多くの細菌に効果がある代わりに負荷の高い、広域スペクトル抗生物質を用いる必要があります。治療期間も、初期のUTI を治療する場合よりもはるかに長くなることが多いのです。このようないわゆる第2 選択抗生物質は、重篤で危急な他の疾患によく使用されるものです。UTIの初期検査と治療が不十分なために、こうした重要な抗生物質群に薬剤耐性が生じる可能性が高くなっています。UTI診断の精度向上が抗菌薬の適正使用に役立つ、もう1 つの例です。
UTI を頻繁に発症し、不幸にも生活の一部になっている人たちもいます。常に軽度のUTIに似た症状に悩む人たちも見逃せません。膀胱痛症候群または間質性膀胱炎と呼ばれますが、これまでは感染以外の要因から生じたと考えられ、可能性のある他の原因がすべて排除された場合に診断が下されます。調査によると、米国ではこのような症状に苦しんでいる女性は800 万人に上るともいわれています18。膀胱痛症候群/間質性膀胱炎が、慢性の低レベル細菌感染によって引き起こされるのではないかという考えが広まっています。上記のように診断検査が不完全なことを考慮すると、説得力があります19。
改善のために、今できること
UTI 症状をかかえた人々の状況を改善するために、医療従事者が今すぐ実施できる、2つのステップがあります。
まず、尿試験紙検査が有用であるとは認めつつも、感度が低いことは医療専門家の間でもっと周知すること。
次に、尿培養試験の欠点をきちんと理解し、患者さんに症状があるのなら、たとえ陰性と出ても安易に「感染なし」と解釈しないこと。
UTI かどうかを一番よく判断できるのは、多くの場合、症状を経験している患者さん自身である、ということを忘れてはいけません。画一的なアプローチは患者さんを失望させることになりかねません。たとえば、どんな病原体種も一定の数で存在していれば、すべての人が同じように影響を受けると仮定するのは単純すぎるでしょう。膀胱内に細菌が一定量いたとしても、併存症を持つ率も高い高齢の糖尿病患者と、健康な20 歳の人が、同じよう影響するでしょうか。
常識的な対策でも患者さんの経験を改善する可能性はありますが、抗菌薬の適正使用には役立ちません。
尿試験紙の先へ:ポイントオブケア検査がもたらす、 UTI の診断・治療の変革
診療所や病棟、介護施設など、患者さんの近くで診断をすることには、たくさんの利点があります。サンプルをすぐに検査し、患者さんにはその場で適切な治療を行えます。
ポイントオブケア検査では、臨床医がもっと積極的に検査にかかわれることになり、その結果に基づいて臨床的判断を下せます。さらにサンプルが輸送により劣化や変化することがないため、より正確な検査結果が得られます。
UTI 診断で原因物質とその抗菌薬耐性プロファイルをできるだけ早く、できれば患者さんが医療施設から帰ってしまう前に特定できれば、非常に効果的です。適切な抗生物質をすみやかに処方でき、効かない抗生物質を過剰にあたえることを避けられ、患者さんが生活の質を取りもどすことができるでしょう。
これを目標に、現在市販されている、または開発中のポイントオブケア診断システム装置があります。たとえば、SSIDiagnostictica 社のFlexicult システムは、デンマークなどの診療所で広く使用されています。
このシステムでは 寒天培地プレ―トが6セクションに分けられ、そのうち5 つにそれぞれ異なる抗生物質を入れ、残りの1つには寒天培地のみが入っています。尿サンプルをプレートに塗布し、16~24 時間培養します。この後、優勢菌の菌量(1 mL あたり 1000 CFU まで)と耐性プロファイルを判定できます。
もちろん、このシステムでも、患者さんがさらに1 日症状をがまんする、または短時間とはいえ合わないかもしれない抗生物質の投与を受けなければなりませんが、少なくとも離れたセントラル・ラボでの検査に比べて時間が大幅に短縮されます。
最近ではポイントオブケアシステムの有望な革新技術で、患者さんが医療施設にいる間にUTI 病原体の検出と抗生物質耐性のプロファイリングができるようになっています。これならただちに適切な抗生物質を提供できます。
たとえばシスメックス社のSysmex PA-100 AST システムは、顕微鏡とマイクロフルイディクスを使って細菌の増殖をリアルタイムでモニタリングし、一般的に使われる5 つの抗生物質について、45 分間で抗生物質感受性プロファイルを出します。この技術は2023 年に発表され、2024年に高名なLongitude AMR 賞を受賞しました。
ODx Diagnostics とTTP は、同じくらいの時間で結果を出すことを目標としたシステムを共同開発しました。光散乱を用いて細菌細胞の増殖と、一般的に使用される抗生物質に対する感受性をモニタリングする装置です。
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ポイントオブケアシステムは、適切な治療を迅速に受けることができるため、患者さんの大きな助けになりますし、不適切な抗生物質の投与を減らすことにもつながります。一般的な病原体によって起きた単純な急性尿路感染症の患者さんの多くは、このような方法で速く正確に治療できます。多くの人が直接利益を得られるように、このような診断が医療界をリードすることを、私たちは願っています。
ただ、あるべき方向への大きな一歩であるとはいえ、ポイントオブケア培養の診断で、すべてのケースが検出できるわけではありません。一般的ではない、普通より増殖が遅い、あるいは増殖しにくい微生物が原因のUTIだと、感染症が見逃されるおそれがあります。また、患者さんがすでに抗生物質を服用していることもあります。この場合は細菌の増殖が遅れ、ポイントオブケア培養試験の時間枠で検知できないかもしれません。さらに、病原体の量が少なすぎて検出できない場合や、混合感染、また無害な膀胱微生物叢菌種が検出されて検査の解釈が複雑になることもあります。このような場合は、別のアプローチが必要かもしれません。
診断を改善するための技術オプション:UTI診断を拡張する
症状から UTI があることはわかっていても、菌種が特殊だったり、低量すぎたり、膀胱壁に埋まったりしていると、現在使用されている方法では役に立たず、患者さんにはやみくもな抗生物質が処方されがちです。
UTI や薬剤耐性と取り組む上で、今が次世代シーケンシングなどの分子技術を使用する絶好の機会です。UTIを引き起こす微生物のなかには標準的な手法で培養できないもの、まったく培養できないものもありますが、DNAシーケンシングは、あらゆる微生物の検出に使用できるのです。
この方法にも難しい面はあり、その1つが、膀胱は以前考えられていたように無菌ではなく、実際には細菌叢が存在することです。ある細菌がその菌叢の仲間で無害なのか、UTI の病原体なのか、判断するのが簡単でないこともあります。尿サンプルには周囲の皮膚や性器部分からの菌叢が含まれることもあり、これらの分離株が膀胱内にあると誤って判断される可能性があります。それでも、従来の方法がうまくいかなければ、このような広範な臨床検査を検討する必要があります。
標準的な診断検査に失望し、すでに消費者直結型の分子検出サービスに目を向け始めている患者さんもいます。英国と欧州では現在Digital Microbiology社 が、病原体同定のためのOxford Nanopore シーケンシングを提供しています。米国ではMicroGenDx社で医療従事者にPCR と DNA のシーケンシングサービスを提供、また消費者への直接サービスもしています。
UTI の病原微生物の分子検査の欠点としてよく挙げられるのは、薬剤耐性の判定が、培養ベースの表現型手法に比べて信頼性が低いことです。耐性に関する遺伝的特徴が、一部は知られているものの、他の多くはまだわからないためです。
それでも一部の耐性の特徴は検出されます。慎重に使えば、適切な抗生物質を選択するのに役立ちます。また、菌種を知れば、(後天性耐性を考慮せずに)菌に最も適した抗生物質を選ぶ際に有用です。分子による菌種同定のもう1つの利点は、正しい培養条件でその菌種を増殖させ、抗生物質感受性試験を行うことができることです。
患者中心医療と抗菌薬適正使用のために、理想的な UTI 診断とは
現状では既存の方法に限界があるため、患者さんには生活の質の面で多大な不利益をあたえ、社会的にも抗生物質耐性の増加という大きなコストをかけています。もっと強力で感度が高く、きめ細やかなソリューションが早急に必要です。
以上を念頭に、患者さんのニーズ(特に女性のニーズは昔から軽視されてきました)を満たすため、そして薬剤耐性に対処するというきわめて差し迫ったニーズのため、UTI検査方法が満たすべき要件を以下にまとめました。
検査または検査の経路
- できるだけ早く患者さんと臨床医に結果を知らせ(理想的には、診療所を訪れた患者さんが帰る前に)、適切な治療が始められるようにする。
- 原因菌が感受性を示す抗生物質をすばやく同定する。
- 本当にUTI で苦しんでいる患者さんを見逃すような、あてにならないカットオフ値を設けない。陰性・陽性の判定は、尿路病原体の検出に加えて患者さんの症状を中心とした、適切な基準に基づいて行う。
- できるだけ分子型感受性試験ではなく表現型感受性試験を行う。それが無理な場合は、分子型感受性試験のデータを慎重に、十分な情報に基づいて用いる。
- 「混合感染」や正常な膀胱菌叢の存在に対処できるようにする。
- 患者さんがすでに抗生物質を服用しているときもそうでないときも同様に正しい結果が出るようにする。
- 増殖が遅い、または培養が難しい原因菌も検出できるようにする。
- 治療の進行状況をモニタリングできるようにする。
よりよいUTIケアのために、アクションを起こそう
患者さんのため、そして抗菌薬の適正使用のために、UTI 診断を改善すべきなのは今です。ポイントオブケア抗生物質感受性検査など、有望な開発はすでにいくつかなされています。ですがUTIは複雑です。すべての患者さんのニーズを満たすには、さらに努力しなければなりません。診断法の開発には時間がかかるため、この分野では、業界と政府からの関与が今すぐ必要です。さらに、ポイントオブケア検査の導入を促進するためには、臨床医がこの診断法を使いたくなるような、適切な診療報酬も必要でしょう。
UTI への理解は不完全ではありますが、深まってきています。最新研究を活用するとともに、患者さんの声に耳を傾け、UTI診断の今後の方向性を決めていきましょう。
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