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細胞治療を診療所でも可能に: 8 つのイノベーション

細胞・遺伝子治療は、治療の概念そのものを革新する可能性を秘めています。ただし、生物学領域のイノベーションや発見が進むにつれ、医薬品開発のプロセスも複雑さを増します。医薬品の開発費は過去 10 年間で 140% 増加しており、細胞と遺伝子の研究開発を革新するさまざまな機会を阻害しているのが現状です。 細胞・遺伝子治療の実現をはばむ障壁は高すぎて、町の診療所で治療を提供するのは幻想と思われがちですが、TTP は今こそ変革の時だと考えています。TTP は、これらの課題に現実的かつターゲットを絞った方法で対処するため、8 種類の革新的戦略を考案しました。この 8 つのイノベーションは、理論上だけではなく、TTP がすでに社内技術に導入している取り組みであり、細胞・遺伝子治療の進歩を加速させる鍵となることが期待されます。

#1

小型化で効果的な力価アッセイを開発

細胞・遺伝子治療で一貫性と力価を確保することは、開発者や規制当局にとって大きな課題です。

生物学的反応を解明するために必要になることが多いのが、レポーター細胞株と初代細胞です。

従来、細胞型のアッセイ形式では、1 データポイントあたり数百から数万個の細胞が必要であり、まれな細胞サンプルを扱うにはあまり実用的ではありませんでした。サンプルの力価を完全に把握するには多くの場合、さまざまなアッセイが必要なのです。

このプロセスのために、サンプルの消費量も、試薬や細胞型のアッセイの費用、サンプルのばらつきも増大します。サンプルの不足やアッセイ開発投資の必要性、個別のアッセイ間の一貫性にかかわる課題につながりかねません。

小型化は解決策の1つとなり、さまざまな代替手段への道を開きます。マイクロウェルや液滴を使用すれば、nL スケールでのアッセイが可能になり、サンプルの節約になります。同じく細胞数を 10,000 以上から 10~100 に削減することで、より安価に同等のデータ品質を実現できます。1 つのサンプルを複数のアッセイで使用し、多重化された読み出し結果を得ることもできます。

#2

細胞のカプセル化で、再生医療開発の細胞培養をスケールアップ

再生医療製品の開発は、繊細な細胞種を生かしておくための念入りな細胞培養プロセスを伴うことがあります。少量なら高品質の細胞を製造できても、規模を拡大するには、ヒドロゲル内の細胞のカプセル化など、さらに対策が必要です。

医薬品開発で、このボトルネックに対処するには、作業手順を合理化し(手動工程の時間を短縮しながら、処理能力を最大化、数十億個の細胞を処理)、さまざまな細胞種とヒドロゲル材料に信頼性の高い性能を発揮して製造拡大への明確な道筋をあたえるための特殊な機器を使うことが必要です。

TTPは株式会社セルファイバと提携、同社の研究開発用の細胞カプセル化技術を、生産対応システムへと開発しました。TTP が採用したのは拡張可能な設計、これによってセルファイバ社の技術を研究室規模(mL~Lまで)から産業規模に拡大させました。以前の細胞培養量はわずか mLか L 単位の最大容量でしたが、TTPの設計によって数十 L を保持できるようになったのです。セルファイバ社の技術を科学的に理解することで、長時間の操作でパフォーマンスを実証することができました。医薬品製造装置の設計における TTP の経験を活かし、セルファイバ社の GMP 環境への供給計画を前進させました。

セルファイバ社との共同開発の詳細については、こちらをご覧ください。

#3

プロセス自動化にターゲットを絞り、生物学的リスクの低い拡張可能なソリューションを迅速に導入

細胞治療の開発では、早めに自動化を取り入れるべきです。自動化でメリットを得るには、1 つの工程にフォーカスすること、個々の細胞処理要件に対応するカスタム機器を開発すること、そして商業生産のニーズを満たしながらスケーラビリティを設計段階から取り入れることが必要です。

工程自動化に向けたTTPのアプローチは、製造業の例を参考に PD ワークフローを把握・監査すること。これが、重要な要素とタイミング、プロセスのボトルネックの特定につながります。

もう 1 つの重要なステップは、ハードウェア開発を始める前に、プロセスの構造を評価することです。そのためには、生物物理学や流体力学、モデリングを活用し、エビデンスに基づき、細胞中心の、拡張可能なソリューションを導き出します。

さらに、TTP のターゲットを絞ったアプローチでは、樹立細胞株や改変細胞株を使って、原薬の適切な代替成分の開発を支援します。これで、開発用細胞株を入手するという課題が早期の段階で解決します。

#4

非接触細胞カウントで、製造工程のインライン・リアルタイムのモニタリング

細胞療法の製造プロセス中、多くの段階で細胞のカウントが行われます。通常はスタンドアロン型の装置で行い、手動での準備工程が必要です。

したがって、インラインで導入できる非接触細胞カウント法は、作業者の時間節約になり、測定のばらつきを減らすための重要なイノベーションです。

TTP プロジェクトリーダーの James Stein に、インライン細胞カウント法として画像化を導入する取り組みについて聞きました。非接触細胞カウントに関しての詳細は、こちらをご覧ください。

#5

デジタル化で容易に――データの共有、製品の追跡、製造工程の改善

細胞・遺伝子治療を一般の市場に導入するには、何が必要でしょうか?デジタル化と AI は、複雑な生産工程や、やっかいなサプライチェーン、命にかかわる物流を改善する鍵となり得るでしょうか。そして、柔軟性を向上してエラーを低らし、フィードバック制御を可能にするために、もっと多くの企業が標準化に協力する意思があるでしょうか。

最近のポッドキャストのエピソードで、デジタル化の進展により AI が導入されるようになり、さらに迅速なプロセス開発が実現する可能性について、専門家に聞きました。

特に重要なのは、バッチ記録に混乱が生じれば、本来効果的ながん治療を受けられるはずの患者さんが、一から全行程を繰り返すはめになるかもしれないことです。したがってデジタル化で人的ミスのリスクを低減することは、業界に大きく寄与する可能性があります。また、医薬品開発チーム全体で知識を共有する効果的な手段としても機能します。

医療業界内でも他の分野では、高い反復率が開発の役にたっています。ところが細胞・遺伝子治療業界では反復が少ないことが多いため、異なる学習アプローチが重要です。

TTPの Stuart Lowe が司会を務めるポッドキャスト「 Invent: Life Science 」で対話全体を視聴できます。

#6

製造業界からヒントを得て、工程のボトルネックを特定し対処

プロセス開発の研究室でのワークフローを観察することは、時間の節約になります。これにより機器の使用を統一化し、再現可能な作業の実施を簡素化、スケールアップで生じそうな障害を特定することができます。

ある工程の段階がどこでどのように行われるかを分析することは、自動化ソリューションの設計の大事な出発点です。製造プロセスの総合的な評価には、作業時間の分析、ラインの均等化とリソース確保、プロセス費用のパレート分析、スケールアップの設計などが含まれます。

こうした時間と動作の分析から得た情報を踏まえて、設備のレイアウトから、消耗品一式と備品の設計、そして自動化や半自動化戦略の開発へと進むことができます。

細胞・遺伝子治療の製造プロセスに対するこの革新的なアプローチは、Achille Therapeutics 社の腫瘍採取ワークフローを支援した際に貢献しました。革新的な自家細胞療法の大規模製造にあたって、TTP が効率化にどう貢献したか、こちらからご覧ください。

#7

低侵襲の細胞選別で、製造向け幹細胞処理を実現

細胞療法の製造では、患者さんが必要とする製品を提供するため、細胞の選別方法は迅速で低侵襲、無菌でなければなりません。従来、細胞の選別は、専門施設で熟練した作業者だけが行うものでした。

製造に用いるための細胞処理では、低侵襲で無菌環境下の細胞選別が非常に重要です。細胞の機能を確保し、状態の乱れを低減、細胞の特性を保ち、集団の均一性を維持するためです。これが、より信頼性の高い分取プロセスにつながります。負担のかかる手法では、特に機械的ストレスや温度変化に敏感な細胞を損傷するリスクがあり、細胞死やその他の機能障害につながるおそれがあります。特に幹細胞の多能性や T 細胞の抗原認識といった重要な特性は、損なわれやすい性質を持ちます。

TTP グループ会社である Cellular Highways 社は、RUO と GMP の両方で使用することができる蛍光型の細胞ソーター Highway1 を開発しました。ターゲットの細胞はフローサイトメトリーによって特定され、特許取得済みの Vortex Actuated Cell Sorting(VAC)技術によって選別されます。この技術は、マイクロ流体チャンネルを通過する細胞を穏やかなボルテックスで分離します。

機械視覚で選別工程を継続的にモニタリング(最大 37,000 細胞/秒の速度)し、プロセスを自動的に調節・制御して収率と純度を最大化、人による選別工程の監視をはぶくことができます。

#8

自動化で人件費とスペースを削減

このように疾患の治療に驚くべき可能性を秘めている細胞・遺伝子治療ですが、専門知識や製造能力が不足し、低コストでの生産が困難なため、多くの患者さんがこの最新の治療法を利用できない状況です。

現在、細胞・遺伝子治療の製造には、熟練した作業者と大規模で専門的な研究施設を必要とする手動の工程が含まれます。細胞・遺伝子治療メーカーは、厳しい規制要件に対応する必要もあります。つまり、労働集約型で高コスト、低生産性の製造プロセスであるのが実情です。

しかし自動化が進歩すれば、今の非効率な状況に対するソリューションの1つとなります。プロセスの自動化で、高度に専門的でコストのかかる労働に依存するのを減らせる可能性があり、手動の工程と人的ミスを最小限におさえることで、効率も向上します。同様に、モジュール式の拡張可能な設計でスペースを最適化し、大規模で高額な設備はあまり必要としなくなります。また、柔軟な自動システムにより、物理的な設備を拡張しなくても、需要に応じて容易に生産量を調整できます。

TTP のグループ会社である Cellular Origins 社は、従来の手動技術に比べて最大 30 倍の空間効率を実現する完全自動化プラットフォーム Constellation を開発しました。これによって労働量を 1/16 にし、製造コストは 51% 削減、効率的で高度な治療薬の製造が可能になりました。

細胞・遺伝子治療の開発をスピードアップしたいとお考えですか?

TTP は細胞・遺伝子治療の開発プロセスを詳細に分析し、品質とコンプライアンスを改善しながら、細胞・遺伝子治療の変革を阻む障害を解決する 8 つのイノベーションを開発しました。過去から現在進行中のプロジェクトで、最先端の技術革新をリードしてきた TTP は、高度な専門性および革新的な知見を通じて、クライアント固有のニーズに最適なソリューションを提供したいと考えます。

TTP と共に、治療開発を効率化し、すべての人が細胞・遺伝子治療を利用できる道をひらきましょう。

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