背景
診断検査をなるべく患者さんの近くで行いたいという需要はますます高まっていますが、それがバージン(再生でない)プラスチック材料の使用を増やすことにもつながっています。TTPは、検査の品質を犠牲にすることなく、使い切り診断検査のプラスチック含有量を削減する道を探りました。
ソリューション
TTP の診断技術チームは、もっと持続可能な材料を用いて製造する手段として、TTP が以前 Prolight 社と共同で開発したMicroFlex が有効なことをつきとめました。これをコアテクノロジーとして、迅速な開発のためのワークショップを立ち上げ、短い期間で多くの製品コンセプトをくり返し検討、最終的にecoFlexとなる設計を完成させました。
成果
こうして開発されたのが再生紙パルプで作られ、中央ラボでの同等の検査に比べてプラスチックの使用量を 95% も削減する、画期的なイムノアッセイ・プラットフォームです。目標原価1ドル未満のecoFlexは、既存のラテラルフロー・ストリップと十分競えます。中核となるMicroFlexテクノロジーによって、ポイントオブケアでラボ品質の定量的結果が得られるのです。

米国だけでも2022年初頭までに7億5千万以上のラテラル・フロー検査が行われ、7,500トン以上のプラスチック廃棄物が発生しています。
使い切り診断検査が普及し、世界中で町の病院から薬局、夜間診療所、個人の自宅で、分散的な診断ができるようになってきました。ラボ施設が近くにない地域での緊急検査や診断のニーズを満たすなど、世界の保健問題に非常に有益であると実証されています。
イギリスでは新型コロナウイルス用にラテラルフロー検査(イムノクロマト法とも呼ばれる)が20億回以上も行われ、そのたびに10グラム以上のプラスチック廃棄物が発生しました。ほとんどが検査ストリップのプラスチックハウジングから出ています。膨大な量のプラスチック廃棄物が環境にあたえる影響を考えると、製造方法の見直しが求められます。

TTPのアプローチ
使い切り診断検査がラボ環境から出て、さまざまな場所で使われるケースが増えるなか、重要なのは診断検査の品質を保つことです。コロナ禍で多くの人が使ったラテラルフロー型検査は簡単で安価ですが、感度と特異度では中央ラボでの検査にかないません。ラボ環境から離れた場所で行うな検査でも、ラボの品質を維持することが課題となります。
今回のプロジェクトの目的は、分散環境でラボ品質のELISA検査を提供することをめざし、TTPがProlightDiagnostics向けに開発した既存のMicroFlexプラットフォーム(下記データ参照)を進化させ、より広い市場機会に対応させることでした。長期的な環境・倫理的影響を考慮しつつ、イノベーションを強化してビジネスチャンスを広げるために、ユーザー中心思考に重点を置いた設計アプローチを採用しました。

TTP はMicroFlex の主な機能を再検討し、さらに強化したいと考えました。ラボでのほとんどのイムノアッセイでは考慮する必要のなかった、元々のシステム設計でのユーザーと技術的問題点を理解するため、人間中心設計のアプローチをとりました。たとえば、MicroFlexカートリッジには大容量の血液処理用のオンボード遠心分離機が搭載されていました。実用的な装置ですが、少量のサンプルには必ずしも必要ありません。単回使用デバイスには血漿分離膜を組み込むなどの方法もあるからです。
アイデアをすばやく生み検討するために、多分野にまたがる専門家でワークショップを行いました。スピーディなアプローチで、ユーザーやクライアント、その他の要件を満たさないアイデアは、すぐに却下ができました。
チームがワークフローを理解し、ユーザビリティの問題点を最速でテストできるよう、人間工学モデルが作成されました。この設計法を活かし、TTP は既存技術の主な USP(ユニークセリングポイント)を際立たせ、また、どこまでプラスチック使用量をおさえられるかを考え、持続可能性を重視した ecoFlex を開発することができました。

コンセプト
コアに MicroFlex テクノロジーを用いたことでプラスチック以外の材料も、機器との相互作用を考慮しつつ、検討できるようになりました。パルプ製品メーカーとも話し合い、分析ストリップが使え、ラテラルフロー検査と同等の価格で大規模生産ができる設計を実現しました。ecoFlex はプラスチックを使用を2g未満で作れます。この全く新しい紙パルプ・カートリッジは、TTP が Prolight Diagnostics と共同で開発した既存の MicroFlex テクノロジーを活用することで、中央ラボ品質の ELISA ワークフローを実現できるのです。目標原価が 1 ドル未満である ecoFlex カートリッジは、既存のラテラルフロー・ストリップと競合しながら、スケールアップに適したポータブル・デスクトップ形式で中央ラボの定量的パフォーマンスを実現。再生可能な素材を使うことを最重点にして開発されています。

持続可能性
従来のバージンプラスチックに代わる材料を考慮するには、剛性や漏れ、サンプルの取り扱い、滅菌、保存期間など、多くのことが問題になってきます。MicroFlex テクノロジーは、特許取得済みのフレキシブルな膜により紙パルプの制約に対応できると同時に、同等の品質の中央ラボ・ベースの検査よりも、プラスチックの使用量を 95% 削減します。

このプラットフォームの構想によって、
- この技術が、体外診断市場での主要な原動力、たとえば精度や信頼性、ユーザビリティ、手頃な価格などに対応することを強調。
- リサイクル紙パルプから作られた革新的な消耗品デザインを開発し、同等の品質の中央ラボ・ベースの検査よりもプラスチックを 95% 削減しました。
- 既存のテクノロジーを再構築、再発明して、より幅広い市場に参入しやすくしました。