ケーススタディ

研究室水準の免疫診断のため、マイクロ流体カートリッジとベンチトップ機器を開発

Prolight Diagnostics 社は、磁気ビーズ・イムノアッセイをを研究室水準のポータブルな検査プラットフォームにする道を探っていました。TTP は生化学と工学、製品設計のエキスパートとして、マイクロ流体カートリッジと機器の設計と開発、試験を行いました。

背景

Prolight Diagnostics は、磁気ビーズを用いたマイクロ イムノアッセイ(ELISA)を、研究室水準の性能を維持しつつ、ポイント・オブ・ケア・システムにしたいと考えていました。

ソリューション

TTP は、適応性に優れたマイクロ流体カートリッジとベンチトップ型機器を設計、開発、試験しました。革新的な血液から血漿への変換技術と、新しいタンパク質の精製・濃縮システムを備え、すべて使いやすいフォーマットになっています。

成果

プロトタイプの MicroFlex カートリッジを用いて、すでに2 種類のアッセイが翻訳されています。このカートリッジは従来のラボベースの検査と高い相関性を示し、ポイント・オブ・ケア環境に最適化された「サンプルから結果まで」のワークフローを実現しています。

検査室アッセイとポイント・オブ・ケア検査のギャップを埋める

免疫診断と呼ばれる、タンパク質と抗体の結合反応に基づく診断ツールは、数十年前から存在します。抗体を含浸させた膜上に毛細管現象を利用して液体を流すラテラルフロー・デバイスは、ポイント・オブ・ケア検査にとって安価で信頼性の高いソリューションです。しかし、神経変性疾患や心臓疾患などのバイオマーカーには、より高い精度と感度が求められます。研究室環境なら通常は、マイクロタイタープレート上の磁気ビーズ技術を用いてこれを実現できますが、分散型の利便性と研究室レベルの性能のギャップを埋めることは、以前として課題です。

Prolight Diagnostics 社から、使い捨て型のポイント・オブ・ケア・フォーマットで高感度なマイクロイムノアッセイのできるプラットフォームを開発したいという相談が寄せられたとき、TTP は、この課題がエンジニアリングチームと生物学チームの緊密な連携を必要とすることをすぐに理解しました。幸い TTP には「Flex Membrane」というプラットフォームがあり、これを出発点として利用することで、迅速に開発を進めることができました。元々は DNA シーケンシング時のサンプル調製用に考案されたものですが、Prolight のイムノアッセイにも適応できる、柔軟な流体処理装置にもなったのです。

プロトタイプの作成

Flex Membrane フォーマットを起点に、Prolight Diagnostics 社向けのマイクロ流体機器のプロトタイプとして、使い捨て「MicroFlex」カートリッジを開発、構築しました。

(画像見出し)TTP が設計し、プロトタイプを作成した Prolight Diagnostics 社向けの使い捨て Microflex カートリッジ

このシステムは、標準的な磁気ビーズベースのイムノアッセイ反応を実行できるほか、中央検査室のロボットシステムで行う主要な液体処理機能(効果的な混合、洗浄、磁気ビーズの処理など)をすべて実行できます。カートリッジ内のマイクロ流体混合を改善することで、研究室の机で実施する手法に比べ、培養時間を短縮できました。また、さまざまな抗体結合済みの常磁性ビーズをスクリーニングして、磁気システムの要件を明確に定義することができました。

さらに、機器の設計に向け、ユーザー調査も行いました。そこで明らかになった重要な要件の 1 つは、ポイント・オブ・ケア・プラットフォームの普及を妨げる一般的な課題である、採血管からデバイスへの血液サンプルの移し替えをなくすことでした。そこでサンプルを直接入れられる機能を重視、真空管ローディングシステムを備えたカートリッジを開発しました。

これで採血管をカートリッジに装着するだけで、システムが自動的にサンプルを取り出し血漿を生成、所定量を分注できるようになりました。こうして既存の臨床での採血手順と容易に統合でき、かつ中央検査室レベルの品質である MicroFlex システムを構築しました。

設計改善のイノベーションで、新たな知的財産を創る

当初、このアッセイは全血の投入がうまくいかず、血漿に比べて感度が大幅に低くなりました。この問題は、高品質の血漿を大量に生成できる 10,000 rpm の遠心機をカートリッジに加えることで解決しました。これによりTTPの生物学チームは、感度を高めるためにアッセイを最適化することができ、通常は血漿のために開発される他の研究室用アッセイの化学を評価することも容易になりました。

この革新的ソリューションは欧州特許を取得済みであり、MicroFlex システムの開発以降、遠心分離機を流体消耗品に組み込むことは、多くの用途でメリットがあることが明らかになっています。それにはたとえば、高品質な血漿を大量に生成する必要がある場合、より複雑な検体マトリックスを処理する場合、投入された全血からセルフリー DNA やマイクロ RNA を抽出する場合などがあります。現在TTP は、Prolight Diagnostics 社のために開発したこの技術から、同社が得られる価値をさらに高められるよう、このような商業的応用の可能性を積極的に模索しています。

高品質な血漿を比較的大量に得られるようになったことで、イムノアッセイ反応の前にサンプルを濃縮し、感度を高めるという新たな可能性も生まれました。これを実現するため、特定の標的タンパク質のイオン電荷を利用し、まず精製、次に濃縮しました。生物学チームとエンジニアチームが緊密に連携し、必要なマイクロ流体機構を装置に組み込めるようにしました。その結果、生血漿を直接使用する場合に比べ、感度が 4 倍超向上したのです。

(画像見出し)Microflex カートリッジの断面図。製品性能の中核となる 3 つの特徴を示す。

製品性能の評価

本プロジェクトでは、ベンチトップ型機器の機能するプロトタイプを作成、パイロット製造ラインを用いて数百個のカートリッジを製造し、検査してきました。これにより、2 つのイムノアッセイでの Microflex カートリッジの性能を実証することができました。

  • C 反応性タンパク質:慢性活動性炎症性障害と細菌感染の検査に使用。
  • プロカルシトニン:細菌感染の検査に使用。

いずれの例でも臨床サンプルを分け、半分は Microflex に、もう半分は市販の中央研究室用プラットフォームに使用しました。結果は、感度範囲全体にわたって優れた相関関係を示しました(以下のグラフを参照)。

ポイント・オブ・ケア用機器で研究室水準の結果

TTPが Prolight Diagnostics 社に提供した Microflex システムの最終製品は、使いやすさが際立っています。患者さんは採血管をカートリッジにセットするだけでよく、カートリッジを卓上型機器に挿入すれば、20 分以内に研究室品質の検査結果が得られます。

(画像見出し)ポイント・オブ・ケアでの使いやすさを示す、Microflex カートリッジのワークフロー

高感度の化学発光アッセイに磁気ビーズ処理、そして血液から血漿を生成する遠心機を、手のひらサイズのマイクロ流体カートリッジに統合したこのシステムは、エンジニアと生物学研究者の連携によって、従来ラボで行われていたアッセイを、煩雑で高コスト、時間も要するワークフローの再構築なしに、ポイント・オブ・ケア・プラットフォームへと転換できた好例です。この技術を市場に投入するため、TTP は現在、商業化契約のもとでパートナーシップの機会を模索しつつ、関心を寄せる企業と共に開発の最終段階に取り組んでいます。

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